カワサキ・キッド

長らくジャニーズの長男であったマッチこと近藤真彦さんの事務所退所に際し、後輩である東山紀之さんが苦言を呈したという報道がありました。

私は特に少年隊世代でもないし、東山さんのファンというわけでもなかったのですが、きちっと筋道を通して誠実に問いかける東山さんに興味が湧き、自叙伝である本書を手に取りました。

東山紀之の生い立ち

東山さんと言えば、クールでパーフェクトな洗練されたイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?

生まれながらにキラキラとした王子様のような生い立ちを想像してしまいますが、それはいい意味で裏切られます。

彼が生まれ育った川崎という町は、工場現場やコリアンタウン、ソープランド、競馬場が立ち並ぶ町。

貧しい暮らしの中で出会った人々、出来事が赤裸々に綴られています。

そのような経験や体験を基に形作られていった彼の物事の捉え方や考え方はとても考えさせられるものがあります。

男が敷居を跨げば七人の敵あり

彼の家庭環境、生活環境を知れば、よくグレなかったなぁと思わされます。

様々な人間関係、格差や差別、誘惑は、多感な少年時代の彼には捉えようによっては敵とも言えます。

そして一般社会においては私たちも、理不尽な上司、分かり合えない部下、同僚の嫉妬など様々なことをやり過ごし、対処しながら生きていかなければなりません。

そういった中で彼の生き方の根幹にあるのは「逃げること」であったと言います。

いざとなれば逃げよう

彼は、「不可抗力な理不尽に直面したら逃げるのが一番」と言っています。

それは卑怯ではなく、誰も傷つけない手段として、決して闘わないことを意味しています。

「攻撃は最大の防御」という諺がありますが、逆もまた然り。

防御は最大の攻撃です。

それは、孫子の基本思想である「戦わずして勝つ」にも通じます。

現代社会においては、この考え方はとても重要だと思います。

また、例え負かすとしても相手に花を持たせること。

それはストレスフルな現代を生き抜く処世術かもしれません。

まとめ

本書は東山紀之さんが、40代になり改めて自身のルーツを見つめるために、生まれ育った川崎の町を歩き、写真に収めながら振り返った自叙伝です。

それまでの彼に抱いていたイメージがいい意味で裏切られ、社会の中で生きていくのにヒントとなるような物事の考え方を得ることが出来ます。

様々な出会いの中で形作られた彼の物事の捉え方は、参考になる部分が多く、遠い世界のスターであった彼がなんだか身近に感じます。

特にビジネスシーンにおいては、戦わずして勝つということを掘り下げたくなる気持ちになります。